ファンタジーものによく登場する地水火風という属性の考え方は物理学の視点から見ても面白いと感じる話
4大元素 ≒ 物質の3態+プラズマ?という話
日本のファンタジーものによく登場する4大元素、「地」「水」「火」「風」という4つの属性が、現代の物理や化学の概念である「物質の3態」+「プラズマ」と対応してるのが面白いと感じたので、自分の知識の整理も兼ねてまとめておこうと思う。
- 創作の中で4属性はどのように描かれることが多いか
- 4属性の起源や発祥、元になった概念は何か
- なぜファンタジーもので4属性が広まったのか
- 対応する物理(を含む科学)の概念はどんなものがあるか
- なぜ面白いと感じるか
あたりをまとめてみる。
創作の中で4属性はどのように描かれることが多いか
日本のファンタジーものの創作の中で、「地」「水」「火」「風」の4属性は4大元素の文字通り、全てのモノを構成する最小要素のように描かれることが多いと思う。
地面の土や岩は地属性。場合によっては樹木、鉄などの金属なんかも地属性とするだろうか。
川の流れや海などの水はもちろん水属性。
空気や空気の流れである風が風属性。
火属性に該当するのは、やはり火である。
また、これらの属性は、それぞれ精霊などの象徴的な存在を持つことが多い。
人が属性の力を使用する場合、こうした象徴的な存在に力を借りる、といった描写がされることが多い。場合によっては、空間中に存在する任意の属性の元素に何か作用をして使用する、ということもあるようである。
例えば泉のように水の湧く場所で「この場所は水の力が満ちている」といった表現をする場合は後者に該当する。もちろん、水の力が満ちている場所は水の精霊の力が強いためにそうなっている、といった考え方もできると思う。
4属性の起源や発祥、元になった概念
よくある4属性の起源は、古代ギリシアの自然哲学の概念である「4元素説」かなという印象。
人によって解釈はまちまちだが、4元素が全てのものを構成する素で、これらの組み合わせでいろいろなものができている、といった感じの考えである。
他に、4つの元素は「熱・冷」+「湿・乾」の組み合わせによって表せるため、こっちが根本なんじゃないか、みたいな考えもある。こっちは錬金術として発展していったようである。
(中国には5行説というものもあるようである。そのうち調べてみます。)
ちなみに、これらの概念(4元素や錬金術)は17〜18世紀あたりで、別の考え方に淘汰されていくことになる。原子論というやつである。これは、元素は全て原子と呼ばれる小さな粒子でできていて、この原子の組み合わせによっていろいろなものが構成されている、というものである。
原子という概念自体はかなり古く(古代ギリシア)からあったが、この考え方が支持されるようになったのは割と最近で、それまでは4元素や錬金術の考え方は当たり前に存在していたようだ。(この辺りは調べ始めるとどハマりしそうなのでこのくらいにしておく)
なぜファンタジーもので4属性が広まったのか
日本のファンタジー系の創作で4元素説が広く支持されるのには何か理由があるのだろうか。
パッと思いつくのは、日本人の八百万の神の考え方と4元素説の世界観の相性が良かったから、という理由。
なんでもありがたがって、どんなものにも神様(もしくは精霊?)が宿るという古来からの日本人の考え方は、全てのものは4つの元素「地」「水」「火」「風」から構成されている、とする考えによく融和し、石には地のエネルギーや精霊、神様の力が宿っている、とか、湖には水の精霊が棲んでいるとか、そんな想像がし易かったのではないかな、と思った次第である。
神も仏もない現代科学を少し味気なく感じるのは分からないでもない。
対応する物理(を含む科学)の概念はどんなものがあるか
さて、ここでようやく本題である。
そもそも「地」「水」「火」「風」という4つの属性が、現代科学の概念と対応していて面白いという話がしたいのだった。
ファンタジーものによく登場する4属性は、それぞれ、
地:固体
水:液体
風:気体
火:プラズマ
という、物質の状態に対応しているように感じる。固体、液体、気体に関しては物質の3態というやつだが、火に対応するプラズマは狭い意味では電離気体とも呼ばれている少し特殊な状態のことだ。
どう特殊かというと、プラズマ状態にある物質はイオンと電子に分かれた粒子で構成されているという点で特殊である。これは他の3つの状態と比べて「電気」に非常によく反応することを意味している。(水に溶けたときに陽イオンと陰イオンに分かれる電解質なんかもこの性質を持つ)
他の3つの状態は、分子間力の強さによって区別される。物質の状態は、原子や分子がどれだけ暴れ回れるか、によって決まるというわけだ。
また、これらの状態は、「温度」や「圧力」によって変化する。
温度を上げれば暴れ回る元気が溢れるので気体になるし、温度を下げれば暴れ回る元気がなくなるので固体になる。
圧力を上げると物が密集するので、どんなに元気でも暴れ回れる範囲が狭くなり、固体になる。
反対に、圧力を下げると周りに誰もいなくなるので好き勝手暴れまわり始めて、気体になる。
といった感じである。
しかし、そこらに転がっている石ころなんかは、どんなに頑張って温めてもなかなか液体にはなってくれないし、空気を液体にしようと思ったら相当頑張って圧力をかけないといけない。そういう意味で、石は固体の属性が強いように感じるし、空気は気体の属性が強いように感じる。
言い換えると、石は地属性で、空気は風属性ということになる。
良い対応関係なのではないだろうか。
なぜ面白いと感じるか
ここまで書いてきたことの中だけでも、考えていて面白く感じたネタは多い。
これがなぜ面白いと感じるのか少し考えてみることにする。
大きいと感じるのは、「自分にも考える余地がありそう」と思えることである。想像するのは自由だし、過去の考え方を参考にしたり、現代科学を参考にしたりできるので、想像が膨らみやすい。その過程で、「こんなものがあったのか!」という存在や、「この考え方は面白いな」と感じる考え方に出会えるのも面白い。事実、調べていて様々な説が提唱されていて、そのどれも面白いと感じたし、それらの説がなぜ否定されたのかを知る事で得られる知見もあった。
例えば、それぞれの属性の「変換」は許されるか、を考えるのは面白い。
例を挙げると、現実なら水は熱すれば蒸発するし、冷やせば凍るが、創作の世界で氷や水蒸気はどの属性になるのだろうか。そして、このような状態の変化はどのように扱っているだろうか。実は地水風がものの状態に関わる属性で、火属性は地水風の属性を行き来させる熱の役割を果たしている、とかそんな発想もできる。火はちょっと変なやつになりがちである。
過去に多くの真剣な議論がされてきた概念から得られる、知識や考えの広さが面白いと感じる大きな要因かなとか考えた。
大学入ると周りのやる気のなさに驚く、という話
- 大学生活ってどんな感じ?
- 勉強のやる気がある人ってどのくらいいる?
こんな感じのことが気になる受験生は多いのではないでしょうか。
今回は、大学に学部4年間、大学院で約2年間生活してきた私の経験をもとに、多くの大学生はやる気がないが対策はできる、といった内容のお話をします。
特に、「大学に入ったら勉強を頑張ろう」と意気込んでいる方には絶対知っておいて欲しいことを書いたので、ぜひ最後まで読んでみてください。
内容
- 9割の大学生はやる気ない
- なぜ多くの大学生はやる気がないのか
- 対策(モチベーション維持の方法)
- まとめ
9割の大学生はやる気ない
大学で勉強を真面目に頑張ろうとしている方に悲しいお知らせになります。
タイトルの通り、大学で真面目に勉強をしようという「やる気のある人」は全体の1割くらいしかいません。
もちろん、大学のランクや学部学科によってだいぶばらつきはあると思いますが、文系の学科はさらに低いのではないかと思います。
ちなみに、私は物理学が勉強したくて理学部物理学科的なところに入りました。
「物理学科なんだから、きっと周りはみんな物理が好きで、毎日物理の話で盛り上がるんだろうな」
などと妄想し、それを楽しみに受験勉強を頑張っていたわけですが、いざフタをあけてみると、
「あのサークルは先輩から試験の過去問がもらえるらしい」
「この授業は3回まで休めるから一緒に休んで遊びに行こう」
「あの先生は厳しいから授業をとらない方が良い」
などなど、周りは物理と全く関係のない話で盛り上がっていました。
「いかに授業をサボるか」「いかに楽をして試験を乗り切るか」
そんな話題ばかりで、正直周りのやる気のなさに絶望しました。
想像(妄想)と現実のギャップに打ちひしがれ、勉強に対するモチベーションが滅茶苦茶下がったことを今でも覚えています。
当時の救いは、たまたま周りに数少ないやる気のある人がいてくれたことでした。
授業後に分からないところを教えあったり、どうしても分からないところを一緒に先生に聞きに行ったりしました。その時間はとても楽しかったです。何とかやる気を維持しようと、苦し紛れに前の方の席に座っていて良かったと思いました。
その人の他にも、「あいつはガチ」と言われている人や積極的に質問する留学生の人など、「この人はやる気があるな」と感じた人はせいぜい5人くらいでした。(あとでこの倍くらいはいたことを知りました。それを知るまでは大学生の95%はやる気がないと本気で思ってました。今は9割くらいだと思ってるのでだいぶ丸くなった気がします。)
悲しいですが事実として、9割の大学生は勉強に対してやる気ないです。
ただし、大学のランクが上がればやる気のある人は多少増えるので、真面目に勉強をしようと思ってる人は出来る限り難易度の高い大学へ入ることをオススメします。
なぜ多くの大学生はやる気がないのか
ではなぜ、9割の大学生は勉強に対してやる気がないのでしょうか。
それは、9割の受験生が、受験で合格すること「だけ」を目標にして「辛い勉強」をしているからです。
合格した途端「勉強する意義」を失い、元々たいして興味がない大学の授業のために、「辛い勉強」をすることにやる気を見出すのは、もともと無理のある話というわけです。
多くの受験生が、勉強は辛いものだと勘違いしているので、「辛い勉強をしなくて済む方法」を探し始めるのも、このためです。
「いかに授業をサボるか」「いかに楽をして試験を乗り切るか」ばかり考える大学生は、こんなふうに生み出されます。
残念で仕方がありませんが、では、勉強をしない9割の大学生は一体何をして過ごしているのでしょうか。
せっかく受験勉強を通して、知識と考える能力を手に入れたのに、彼らは一体どんな学生生活を送っているのでしょう。
ぶっちゃけ2〜3割の人はほんとに遊び呆けている印象でした。何しろ大学生になると、酒、タバコ、ギャンブルの類いが合法になっていきます。その手のものにハマってほとんど大学に来なくなる人を何人も見てきました。悲しいですがこれも現実です。
では、残りの6〜7割の人たちは?というと、勉強はそこそこにバイトやサークル活動に精を出す人たちです。勉強もバイトもサークルも頑張るという体力オバケの人も何人かいましたが。
この人たちは目的も行動も多種多様なのであまり細かいところは分かりませんが、明確な目的がある人は割と少なくて、何となくお金が欲しいからバイトを始め、何となく出会いを求めて、何となく楽しそうだからサークルに入る、という感じの人が大部分のように感じました。
当時の私は9割のやる気のない大学生たちに憤りを感じていましたし、見下すような気持ちでいました。しかし、これはもったいない考え方だったなと思います。
「いろんな考え方の人がいるんだな」くらいの余裕を持った気持ちでいる方が行動の幅が広がり、勉強以外の楽しみをもっと早く知れたかも、などと考えています。(時すでに遅し。哀れですね。)
例えば、アルバイトを通して、人に雇われてお金を稼ぐ、という感覚を知ることができますし、サークル活動を通して、自分の好きなことに出会えたり、いろんな考え方の人に出会えたりします。
こういった経験はとても貴重なものだったんだな、と後悔したので、興味のあるバイトやサークルがあるならやってみることをオススメします。(この辺りに関しては、また別の記事を作ってみようかなとも思ってます。)
対策(モチベーション維持の方法)
最後に、やる気のない大学生に囲まれて過ごすときに、勉強へのモチベーションを維持する方法について書いておきます。
今回は3つ、対策方法を紹介します。
まず1つ目は、
「やる気のある仲間を探す」
です。
なんだかんだで、やる気のある人、頑張ってる人と一緒にいると、自分も頑張ろうという気になります。
それはきっとお互い様なので、この人といると頑張れる、という人がいたら存分に頑張りましょう。きっと向こうもあなたの頑張りに刺激を受けて頑張ってくれるはずです。切磋琢磨できる仲間の存在の大切さは、受験勉強を通してそれとなく感じているのではないでしょうか。
2つ目は、
「情報を仕入れる」
です。
勉強したいことがあって大学へ進学したなら、授業で話を聞くだけでなく、自分からその分野の知識、情報を入手するために行動しましょう。
図書館で関連書籍を探してみたり、専門雑誌を購読してみたり。Twitterで有益な情報を投稿しているアカウントをフォローする、とかでも良いと思います。
なんでも構いません。
大切なのは、「自分の興味を刺激する」ことです。
少しでも興味を持った分野なら、きっとその分野の情報に触れることで自分の興味を刺激され、やる気が湧いてくると思います。
3つ目は、
「情報を発信する」
です。
2つ目と関連しますが、自分の知識や入手した情報を周りに共有することで、周りのモチベーションも上がるかもしれません。
また、SNSなどで情報を発信し続けることで、思わぬ人とのつながりができることもあるかもしれません。こればっかりはやってみないと分かりませんが、情報の発信は「人に説明する力」が必要になるので、とても勉強になります。
上記は私の「あの時こうしていれば」の結晶なので、後悔したくない人はぜひ参考にしてみてください。
まとめ
今回は、
- 9割の大学生はやる気ない
- なぜ多くの大学生はやる気がないのか
- 対策(モチベーション維持の方法)
という話を紹介しました。
大事な学生生活を無駄にしないために、自分のやる気を維持するための方法について考えておくと良いと思います。
この記事がお役に立てば幸いです。
日常の物理〜自転車を例にして〜
物理に対して、
- 何のためにやるのか分からない
- 何の役に立つのか分からない
- そもそも何をやってるのか分からない
といった疑問を持ったことがある人は多いのではないでしょうか。
これらの疑問が生まれる原因として、イメージが湧かないことが大きいように感じます。
そこで今回は、そもそも物理学がどんな学問なのか簡単に紹介したあと、自転車を例にとってニュートン力学の運動方程式を使う練習をしてみることにします。
内容
- 物理は何をしたいのか
- 問題を簡略化する
- 傾きの無い道を一定の速さで移動したい
- 登り坂を一定の速さで移動したい
- 下り坂を一定の速さで移動したい
- まとめ
物理は何をしたいのか
物理がしたいことは、身の回りの現象を「説明する」ことです。
なぜその動きをするか、なぜその性質を持っているか、を説明したいのです。
そのために物理では、多くのものが従う法則を見つけ、世の中にはこんな法則があって、この法則に従うから、こういう現象が起こる、というような説明を試みます。
ニュートン力学を例にしてみます。(史実とは異なると思いますがざっくりと)
まず、なぜ物は地面に向かって落ちていくのか、なぜ大砲の弾は放物線軌道を描くのか、といったことを説明しようとした時、世の中には、運動の3法則(1.慣性の法則、2.運動方程式、3.作用半作用の法則)があることを発見しました。
そして、世の中の物はこの運動の3法則に従うので、手を離すと物は地面に落ちるし、大砲の弾は放物線軌道を描く、というふうに説明します。
問題の状況設定
試しに身の回りの現象を運動方程式を使って説明してみることにしましょう。
今回は、自転車を例に取り、一定の速さで進むためにはどれくらい頑張ってこぐ必要があるか考えてみます。
ところで皆さんは、なぜ自転車をこぐのか考えた事はありますか?私はありません。今回はじめて考えます。
別に哲学的な問いかけではありません。
自転車をこぐのは、こがないと大して進まないし、こがないと少しずつ遅くなって止まってしまうからだと思います。
なぜ自転車は、こがないと遅くなっていくのでしょうか?
慣性の法則があるので、こぐのをやめたらそのままの速さでずっと進んでいきそうなものですが、そうはならないことを皆さんも何となく知っていると思います。
その答えの1つは、様々な抵抗を受けるからです。何かに進むのを邪魔されるんですね。
ここでは抵抗として、空気によって進むのを邪魔される「空気抵抗」と、タイヤが回転するのを邪魔する「摩擦」だけがはたらく、という条件のもとで考えていくことにします。
こういう、「問題の簡単化」は物理でよくやる手法です。
まずは、簡単なところから、というわけです。
ここからは「どれだけ頑張って自転車をこげば同じ速さを維持できるか」を考えていくことにします。難しく考えず楽な気持ちで読み進めてください。
傾きの無い道を一定の速さで移動したい
今、傾きの無い道を速さvで自転車が進んでいます。が、空気抵抗や摩擦によって、速さがvよりも遅くなってしまいそうです。しかし、考えるのが面倒なのでどうしてもそのまま速さvで進み続けたいです。
どうしたら速さvのまま進み続けられるのでしょうか?簡単ですね。
こげば良いんです。
ではどのくらい頑張ってこげば良いでしょうか?
これは、空気抵抗や摩擦がどのくらい大きいか、によります。
そこで、ここでは空気抵抗の大きさをFa、摩擦力の大きさをFb、と置いておきましょう。
また、自転車の質量と乗っている人の質量の合計をm、自転車をこいだ時の進む力(推進力)をf、と置いておきましょう。
そうすると運動方程式を立てることができます。運動方程式は以下のようになります。
ma = -Fa -Fb +f
aは加速度ですが、今は速さをvで一定にしたいので、a=0にしたいです。
つまり、
-Fa -Fb +f = 0
です。よって、必要な推進力の大きさは、
f = Fa +Fb
ですね。
受ける抵抗の分だけ頑張ってこげば良いんです。当たり前ですかね。
次は、坂があるときにどのくらい頑張れば良いかを考えていきましょう。
登り坂を一定の速さで移動したい
ここでは試しに、進む道を30°傾けて登り坂にしてみます。それ以外の条件は変わらないことにしましょう。
ここでも速さvで進み続けたいのですが、必要な頑張りは増えるでしょうか、減るでしょうか。坂がない時と同じ距離を進むのに必要な頑張りは、何となく増えそうな気がしますね。
実際に運動方程式を立てて確認してみましょう。
坂がある場合、運動方程式には、自転車と乗っている人にかかる重力の進行方向成分(斜面平行成分)の項が加わります。
gを重力加速度とすると、
ma = -Fa -Fb +f -mgsin(30°)
になりますね。
a=0にするには、
f = Fa +Fb +mgsin(30°)
の頑張りが必要になります。
mgsin(30°)=(1/2)mg > 0
なので、(1/2)mgだけ、坂がない時よりも頑張らないといけないことがわかりました。
必要な頑張りは増えそう、という予想と一致しましたね。
次は下り坂を一定の速さで進むことを考えてみましょう。
下り坂を一定の速さで移動したい
さて、登り坂を考えたのだから次は下り坂、という安易な発想ですが、実は下り坂を一定の速さで進むときには気をつけないといけないことがあります。
皆さんは自転車で坂を下っていてブレーキをかけた経験はあるでしょうか?
私はあります。特に急な坂を下るときはスピードが出過ぎて危ないなと思うので、それ以上速くならないようにブレーキをかけます。
これはつまり、場合によっては「ブレーキをかける」という新しい力が登場するかもしれない、ということです。
実際に考えていきましょう。状況設定を忘れそうなのでもう一度書いておくことにします。
今、自転車で傾き30°の下り坂を速さvで下っています。しかし、空気抵抗Faや摩擦Fbによって速さが変化しそうなので、自転車をこいで速さをvに維持するためには自転車をこぐ必要があります。ただし、下り坂の場合は重力の進行方向成分(斜面平行成分)が、自転車を加速する方向にはたらくことに注意する必要があります。
重力加速度をg、自転車をこいで得られる力(推進力)をfとすると、運動方程式は、
ma = -Fa -Fb +f +mgsin(30°)
になります。
さて、ここで注目なのが、Fa +Fb の大きさと、mgsin(30°) の大きさの関係です。
考えたいのは、vを一定に保つにはどれだけ頑張って自転車を漕ぐか、です。
つまり、a=0となる条件を考える必要があります。
Fa +Fb > mgsin(30°)
のとき、a=0となるためには運動方程式から、
f = Fa +Fb -mgsin(30°) > 0
の頑張りが必要になることが分かります。
一方で、
Fa +Fb < mgsin(30°)
の時、つまり、抵抗よりも重力の進行方向成分の方が大きい時は、
f = Fa +Fb -mgsin(30°) < 0
となり、必要な頑張りがマイナスになってしまいます。
自転車をこいで反対方向に進まなければいけない、というよく分からない状態です。
ここで登場するのが、「ブレーキをかける」という新しい力です。
fを「自転車をこいで得られる力」ではなく「ブレーキをかけて減速する」という力に置き換えれば、何とかvを一定にして坂を下ることができそうです。
まとめると、30°の下り坂を一定の速さvで進むためには、
Fa +Fb < mgsin(30°)
という条件の時、
f = Fa +Fb -mgsin(30°) < 0
のブレーキを掛ける必要がある、ということが分かりました。
まとめ
ここまでで、物理が何をしたい学問なのか、何となくわかってきたでしょうか?
物理学では、何か「説明したいこと」「知りたいこと」があって、それを「説明するための道具(法則や公式)」を用意し、実際に説明を試みます。
今回の自転車の例で言うと、
説明したいこと、知りたいこと
:自転車が一定の速さで進むためにはどれだけ頑張って自転車をこげば良いか
説明するための道具
:自転車と乗っている人の従う法則(運動方程式)
といった感じでしょうか。
そして、今回の例では、一定の速さで進むために必要な頑張りは、坂があるかどうかや傾き方で変わることを説明できました。
物理に取り組む時は、自分が「説明したいこと」「知りたいこと」は何かを考え、説明するために「使えそうな法則」は何かを考えるようにしましょう。
そして、何か法則や公式を勉強する時は、なるべく身近なものを想像しながら考えを進めていけると理解が深まるのではないかと思います。
お役に立てれば幸いです。
物理初心者にオススメの書籍
今回の記事は上記のような疑問を持つ方たちに、オススメの書籍を紹介します。
さっそく結論です。
物理初心者には科学雑誌の Newtonがオススメです。
といってもNewtonにもいろいろあります。
以下で目的別に私のオススメをピックアップしてみたので、参考にしてみてください。
どれもイラストや写真が豊富に載っていて、眺めているだけで楽しいですよ。
- なんでも良いからオススメを紹介してほしい、という方
- とにかく最先端の話題に触れたい、という方
- あまり難しいのはちょっと…、という方
- 量子論!相対論!という方
- 宇宙のことが知りたい、という方
なんでも良いからオススメを紹介してほしい、という方
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少し古いですが、ニュートン力学は投げ上げたボールの軌道から地球が太陽の周りを回る軌道まで、とても多くのことを説明できる強力な方法です。はじめの一歩にオススメです。
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高校物理の内容をやたら沢山のイラストを使って解説しています。
高校物理を勉強したことがある(または勉強中の)方には、こちらも出発点としてオススメです。
光とは何か?
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光にまつわるものは日常生活の至るところにありますよね。
そんな光の物理的な視点がわかる1冊だと思います。
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こんな感じです。
ほかに、「こんなことが知りたいんだけど良い本ないかな?」というものがあればコメントいただければ対応します。
お役に立てれば幸いです。
物理も暗記は必要。大事なのは覚え方。
高校物理を勉強していて、物理に苦手意識を感じる人は、
- 物理の公式が覚えられない、使い方を間違える…どうしたら良いの…
- 何か公式を覚える良い方法はないのかな
- そもそも暗記をせずに済む良い方法はないのかな
といった悩みを抱える方が多いように思います。
そこで今回は、
- 物理も暗記は必要
- 覚える順番が大事
というお話をします。
この記事を読めば、
- なぜ物理に暗記が必要なのか
- 何から覚えていけば良いか
が分かると思います。
物理の勉強をしていく上でとても大事なことなので、ぜひ最後まで読んでみてください。
物理も暗記は必要
私は物理を勉強する上で、暗記=「覚える」ことは必要だと思っています。
なぜ暗記が必要なのかというと、英語と同様、「単語」と「文法」を覚えないと何もできないからです。
どういうことかというと、まず、ここでいう「単語」とは、物理量(速さ、力、加速度など)のことです。そして、「文法」は、物理法則のことを指しています。力のつりあい、とか、力学的エネルギー保存則、などのことですね。
そして、多くの物理法則はいくつかの物理量の関係を数式で表したものになっています。
例えば運動方程式は、ma = F、でしたね。
この物理法則は、質量、加速度、力、という3つの物理量の関係をあらわす数式になっています。
物理では、上記のような「物理法則を組み合わせて問題を解いていく」、というのが基本になります。
つまり、覚えるべきは、
- 「物理量の意味」:単語
- 「物理法則の意味」:文法
です。これを覚えるのが出発点になります。
物理量の意味
では、「物理量の意味」とは何か。
それは、「定義」です。
例えば、速度の定義なら、教科書には「単位時間あたりの変位」などと書いてあるかと思います。
そのまま覚えても、もちろん良いと思いますが、もう少しイメージが湧きやすい覚え方をしても良いかもしれません。
正確に覚えることも大事ですが、自分の覚えやすい(イメージしやすい)言葉で覚える方が身につきやすいと思います。
「単位時間あたり」は「ある時間で」、「変位」は「どれだけ動いたか」などと読みかえると、
「速度の意味」は「物体がある時間でどれだけ動いたか」
になります。多少はイメージしやすくなったでしょうか?
大事なのはイメージできる=意味がわかることです。自分の覚えやすい言葉で覚えてみてください。
物理法則の意味
次は「物理法則の意味」です。
誤解を恐れずにざっくり書くと、たいていの物理法則は「こういう時にはこの物理量とこの物理量にこんな関係がありますよ」ということを言っています。
今度は、力学的エネルギー保存則を例にして考えてみましょう。
力学的エネルギーは二種類あって、それぞれ「運動エネルギー」と「位置エネルギー」といいます。
高校物理によく出て来る位置エネルギーはさらに二種類あって、それぞれ「重力による位置エネルギー」「弾性力による位置エネルギー」といいます。
では、力学的エネルギー保存則は、「運動エネルギー」と「重力による位置エネルギー」と「弾性力による位置エネルギー」には
「運動エネルギー」+「重力による位置エネルギー」+「弾性力による位置エネルギー」= 一定
という関係がありますよ、と言っているかというと、少しだけ違います。
何が違うかというと、「どんな時に」が抜けています。
これは割と大事なことで、例の力学的エネルギー保存則は成り立たない時もあります。
どんな時かというと、摩擦力や空気抵抗といった力が運動の方向にはたらく時です。この時は摩擦などによって力学的エネルギーが熱エネルギーという別のものに変わってしまうため、力学的エネルギー保存則は成り立ちません。
「この法則はどんな時に成り立つか」も覚えておくと、「今回はこの法則は使えないな」という判断ができるようになるのでオススメです。
力学的エネルギー保存則については、以下のような覚え方をすると良いのではないかと思います。
「力学的エネルギー保存則」は「運動の方向に重力と弾性力以外の力がはたらかない時、運動エネルギーと位置エネルギーには、運動エネルギー+位置エネルギー=一定という関係がある」という法則のこと。
少し長いですが、分解すると、
- どんな時に成り立つか
- どんな物理量が登場するか
- どんな関係があるか
を覚えれば良いことが分かると思います。
他の法則や公式でも試してみてください。
物理の法則や公式を覚えるための手順
ここまでの話でなんとなく、「何を覚えれば良いか」は見えてきたでしょうか?
ここまで来ることができれば、あとは問題を解きながら身につけていくだけです。
以下で具体的な手順を紹介して終わろうと思います。
その前に覚える順番ですが、まず分野は力学がいいと思います。
そして、使えるようになりたい法則や公式を選び、そこに登場する物理量の意味を確認しましょう。ここで完璧に暗記する必要はありません。後で問題を解きながら覚えていきましょう。
登場する物理量の意味を確認したら、法則の意味を確認しましょう。これも完璧に覚える必要はありません。
次は使いたい法則を使う問題を選びましょう。その法則や公式が出てくる章に対応する練習問題が載っていると思います。
あとは、物理量の意味や法則の意味をチラ見しながら問題を解くだけです。
まとめると、物理の法則や公式を覚える手順は以下です。
- 使えるようになりたい法則(公式)を選ぶ
- 登場する物理量の意味を確認する
- 法則(公式)の意味を確認する
- 練習用の問題を選ぶ
- 問題を解く
これを何問か繰り返せば、十分使えるレベルで覚えると思います。
さっそくやってみてください。
まとめ
今回は、
- 物理も暗記は必要
- 物理の法則や公式を覚えるための手順
という話を紹介しました。
「何を暗記すれば良いか」を確認したら、「物理の法則や公式を覚えるための手順」を実践して、いろんな物理の法則や公式を使えるようになりましょう。
使えるものが増えると物理は楽しくなってきますよ。
お役に立てれば幸いです。
それではまた。
物理の基礎を勉強する方法
- 物理は基礎が大事と言われるけど、そもそも何が基礎なのかよく分からない
- 物理の基礎を勉強したいけど、何から始めればいいか分からない
今回の記事では上記のような悩みに答えます。
この記事を読めば、
- 物理の基礎とは何か
- なぜ基礎が大事なのか
- 物理の基礎を身につけるためには何をすれば良いか
が分かると思います。
後半の方で具体的な勉強法についても触れています。
物理に苦手意識のある方や、物理の成績が伸びなくて悩んでいる方はぜひ読んでみてください。
(物理の基礎は理解しているのでもっとレベルの高いところまで物理を理解したい!という気概に溢れる方は、微積物理という物についての記事を書いたので参考にしてみてください。理系進学するなら微積物理はやっておくべきか - ご機嫌物理屋ブログ )
物理の基礎とは何か
結論です。
物理の基礎とは、基本法則のことです。
例えば力学なら、運動の3法則、力学的エネルギー保存則などのことです。
特に、これらの基本法則を使って式を作り、それを組み合わせて解く力、これがとても大事です。
私は現在、大学院で物理に関する研究をしていますが、正直、
物理の基礎とは何か?
と問われて即答できる人は物理学科の大学生でもそんなにいないな、と感じています。
物理の基礎は物理を専門に勉強している大学生ですらよく分かっていないほど難しいことなのか、と思うかもしれませんがそうではありません。
大学の物理系の学科といえど、たくさん勉強をして、物理をなんとなく理解して、なんとなく公式を覚えて、なんとなく物理が得意になったから受かった。そんな人が多い印象です。
しかし、あまり物理が得意でない場合、このようななんとなくの理解では中々テストで点が取れなかったり、面白く感じなかったりするのではないかと思います。
そんな方たちこそ、物理の基礎さえ分かれば、テストで点が取れるようになったり、物理を面白いと感じるようになる、と私は考えています。
なぜ基礎が大事なのか
先ほど、物理の基礎とは基本法則のことだ、という話をしました。
では、なぜ基本法則が大事なのか。
それは、高校物理の問題の多くが、その基本法則を使えば解ける問題になっているからです(もっと深い意味で基礎が大事だと言っている方もいるとは思いますが、「高校物理」は問題を解けた方がモチベーションが上がり面白さも実感しやすいと私は考えています)。模試などの偏差値でいうと、50くらいなら基本法則の使い方さえ知っていれば十分到達できると思います。また、それ以上を目指すときの土台にもなります。
まずは、はじめの一歩として、教科書に書いてある基本法則の名前と意味を1回読み上げてみましょう。どれでも構いませんが、はじめは力学の法則がオススメです。
例えば、
運動方程式(運動の第2法則)
:物体に力がはたらくと、力の向きに速度が変化する。速度の変化の大きさは力の大きさに比例し、物体の質量に反比例する。
と言った感じです。速度の変化は加速度のことなので、式にすると、a = F / m 、書き換えると、ma = F ですね。
はじめに読むのは1回で十分です。実際に問題を解く練習をしながら覚えていきましょう。
次は実際に教科書や問題集を使って、物理の基礎=基本法則を身につける方法についてお話しします。
(物理の教科書や問題集を1冊も持っていないという方は、シグマ基本問題集がお手頃でオススメです。以下にリンクを貼っておくので購入を検討してみてください。図書館で借りるというのも1つの手だと思います。)
物理の基礎を身につけるには何をすれば良いか
基本法則の名前と意味を確認したら、次は実際に問題を解きながら練習しましょう。
手元にある物理の教科書や問題集で大丈夫です。その中の例題や練習問題を使うのが良いと思います。
いろんな問題があると思いますが、今回は基本法則の使い方を練習したいので、その法則を使う問題を選びましょう。
例えば、練習したい基本法則が運動方程式なら、
「運動方程式をたてよ」
「力のつりあいの式をたてよ」
といった言葉が出てくる問題を選びましょう。
問題を選んだら、次は問題文を読んで問題の状況設定を把握してみましょう。ここは人によっては少し大変かもしれません。考えている状況がよく分からないな、と感じたら解答を見てしまって構いません。それでもよく分からなかったら別の問題を選びましょう。
問題の状況設定が把握できたら、いよいよ設問の通り、基本法則を使ってみましょう。
例えば以下のような感じです。
問題
:質量mのボールを鉛直上向きに投げ上げた。鉛直上向きを正の向き、重力加速度をg、ボールの加速度をaとして、ボールの運動方程式を立ててください(空気抵抗は考えないことにします)。
状況設定の把握の例
:重力加速度はg、鉛直上向きが正なので、ボールにはたらく重力は-mg。この問題では壁にぶつかったり、糸につながれていたりはしてないので、その他に働く力は無さそう。
解答例
:ボールの質量はm、加速度はa、ボールにはたらく力は重力mgのみなので、運動方程式は、ma = -mg である。
実際にはここまで詳しく書かなくても良いですが、はじめのうちは考えたことをたくさん書いていくと良いと思います。
状況設定を把握するときの注意点は、物理の問題ではなるべく簡単な状況設定にしている、という点です。難しく考えずに、問題文から読み取れる一番簡単な状況はなにか、を考えましょう。
これを何問か繰り返せば、その基本法則はある程度使えるようになると思います。
そして、上の例のように、
という作業を繰り返していけば、物理の基礎が身についていくと思います。
実際にやってみてください。
まとめ
今回は、
- 物理の基礎とは何か
- なぜ基礎が大事なのか
- 物理の基礎を身につけるには何をすれば良いか
についてお話ししました。
ざっくりまとめると、物理の基礎とは基本法則のことで、基本法則を使えれば多くの問題が解けるので基礎が大事。
基礎を身につける練習方法は、
を何問か実践してみること。
という感じです。
さっそく試してみましょう。
お役に立てれば幸いです。
理系進学するなら微積物理はやっておくべきか
今回は上記のような悩みに答えていこうと思います。
勝手な想像ですが、上記のような悩みを持つ方はすでに高校物理をそれなりに勉強している方なんじゃないかなと思います。
そして、誰かが
「微積物理を使えばこの問題は簡単に解ける」
「物理の問題は本来は微積を使って解くものなんだよ」
といっているのを耳にして微積物理について調べ始めたけど、賛成意見や反対意見が色々ある上に、微積物理が具体的にどんなことをすることなのかすらよく分からない…といった感じの状況にあるのではと想像します。
上記は私の実体験です。私の場合、結局その悩みは解決せず、大学に進学してから微積を使った物理の強力さに気づくことになり、受験生の時にこれを知っていれば、、、とかなり後悔しました。
結論です。
理系進学を考えているなら、微積物理はやるべきです。
以下では、私が受験で苦い思いをし、大学進学してから微積物理の強力さに気づいたという経験をもとに、
- なぜ微積物理を勉強するべきなのか
- 勉強するとしたら何から始めるべきか
について、解説していきます。
なぜ微積物理をやるべきなのか
なぜ微積物理をやるべきなのか?
答えは単純です。
物理の法則は微積を使って理解するものがほとんどだからです。
ただ、高校物理の問題は微積を使わなくても解けるように工夫されています(代わりに公式の暗記が必要になっていますが)。
そのため、微積と相性が悪い問題(微積を使って解こうとすると高校では習わないような高度な微積分の知識が要求される問題)や、微積を使わない方が簡単に解けてしまう問題、というのがあるのも事実です。
しかし、問題を解く時に限らず、物理が微積に基づいた学問であると知っていると、高校物理に出てくる法則や公式の理解のしやすさが全然違うと思います。
例えば、単振動は公式がたくさん出てくるので苦手意識がある方が多いように感じますが、微積の知識があると覚えることはぐっと少なくなります。
具体的な式を使って考えてみましょう。難しいな、と感じたら読み飛ばして大丈夫です。微積物理を勉強すれば分かるようになります。
バネによる単振動の運動方程式は、
m*a = -k*x 書き換えると、 a = -(k/m)*x
でしたね。これを微分を使って書くと、
x'' = -(k/m)*x
です。'は時間微分を表していて、速度v=x'、加速度a=v'=x''です。
この方程式のように何かの微分を含む方程式のことを微分方程式と言います。
そしてこの微分方程式を解くと、
x = A*cos(ω*t+B)
となります。具体的な解き方は一から説明していると長くなるのでここでは触れません。ぶっちゃけこれが分かるなら一人前の微積物理使いです。言い換えると、この辺りを自在に使えるようになることが微積物理を勉強するときの目標になります。
A,Bは問題によって決まっている定数で、今回の場合は初期位置や初速度によって決まります。
ωは角振動数で、今回の場合は、ω=√(k/m) ですね。
また、v=x'、a=x''なので、xをtで微分していけば速度、加速度の公式も出てきます。
このように、微積を使った方法を知っていると、
さえ知っていれば、いろんな公式を導出できます。またその公式の意味も理解しやすくなります。
あと、これは大学に入ってからの話ですが、今のうちから「微積を使った物理」に慣れておけば、大学に入ってから遭遇する難しい物理にも対応できる、という利点もあります(微積を使った考え方に慣れていないせいで大学に入ってから苦労してる人がたくさんいます)。
なぜ微積物理をやるべきなのか、についてはこんなところです。
次は微積物理を理解する、はじめの一歩についてお話しします。
微積物理を始めるなら何から始めたら良いか
微積物理を始めるなら、力学の等加速度直線運動が良いかと思います。
位置の微分は速度、速度の微分は加速度、加速度の積分は速度、速度の積分は位置、ということを使えば公式を行ったり来たりできることが実感できると思います。つまり、公式のうち1つだけ覚えてればいいんです。楽チンですね。
微積物理を勉強したい方にオススメなのは、以下の本を購入して読み進めることです。
kindleで無料で30ページくらい読めるのでまずはそこを読んでみましょう。
少し高く感じるかもしれませんが微積の勉強をしつつ力学の本質的な勉強ができる、というこれだけで受験参考書2〜3冊分の価値がある上に解説も丁寧です。しかも各章の最後で微積を使って実際の受験問題を解いてくれています。
正直、私が高校生の時に出会いたかった本ナンバーワンなので、微積物理をこれから勉強したいという方が買って損することはまずないと思います。
まずは無料部分を読んで微積物理を体験してみてください。
(他に良さそうな本があったら追記していきます)
最後に
今回は、
についてお話ししました。
微積分は物理を理解する上で欠かせない存在なので、興味があれば微積物理に挑戦してみてください。
上でも紹介しましたが、以下の本は数学の微積と物理の力学を結びつけて勉強でき、それぞれを勉強するモチベーションも上がるのではないかと思います。大変オススメなのでぜひ無料部分から読んでみてください。
ではこの辺で。参考になれば幸いです。