物理と魔法の狭間に

物理×創作の話題を中心に

ファンタジーものによく登場する地水火風という属性の考え方は物理学の視点から見ても面白いと感じる話

 

4大元素 ≒ 物質の3態+プラズマ?という話
日本のファンタジーものによく登場する4大元素、「地」「水」「火」「風」という4つの属性が、現代の物理や化学の概念である「物質の3態」+「プラズマ」と対応してるのが面白いと感じたので、自分の知識の整理も兼ねてまとめておこうと思う。

 

  • 創作の中で4属性はどのように描かれることが多いか
  • 4属性の起源や発祥、元になった概念は何か
  • なぜファンタジーもので4属性が広まったのか
  • 対応する物理(を含む科学)の概念はどんなものがあるか
  • なぜ面白いと感じるか

あたりをまとめてみる。


創作の中で4属性はどのように描かれることが多いか

日本のファンタジーものの創作の中で、「地」「水」「火」「風」の4属性は4大元素の文字通り、全てのモノを構成する最小要素のように描かれることが多いと思う。
地面の土や岩は地属性。場合によっては樹木、鉄などの金属なんかも地属性とするだろうか。
川の流れや海などの水はもちろん水属性。
空気や空気の流れである風が風属性。
火属性に該当するのは、やはり火である。
また、これらの属性は、それぞれ精霊などの象徴的な存在を持つことが多い。
人が属性の力を使用する場合、こうした象徴的な存在に力を借りる、といった描写がされることが多い。場合によっては、空間中に存在する任意の属性の元素に何か作用をして使用する、ということもあるようである。
例えば泉のように水の湧く場所で「この場所は水の力が満ちている」といった表現をする場合は後者に該当する。もちろん、水の力が満ちている場所は水の精霊の力が強いためにそうなっている、といった考え方もできると思う。


4属性の起源や発祥、元になった概念

よくある4属性の起源は、古代ギリシアの自然哲学の概念である「4元素説」かなという印象。
人によって解釈はまちまちだが、4元素が全てのものを構成する素で、これらの組み合わせでいろいろなものができている、といった感じの考えである。
他に、4つの元素は「熱・冷」+「湿・乾」の組み合わせによって表せるため、こっちが根本なんじゃないか、みたいな考えもある。こっちは錬金術として発展していったようである。
(中国には5行説というものもあるようである。そのうち調べてみます。)
ちなみに、これらの概念(4元素や錬金術)は17〜18世紀あたりで、別の考え方に淘汰されていくことになる。原子論というやつである。これは、元素は全て原子と呼ばれる小さな粒子でできていて、この原子の組み合わせによっていろいろなものが構成されている、というものである。
原子という概念自体はかなり古く(古代ギリシア)からあったが、この考え方が支持されるようになったのは割と最近で、それまでは4元素や錬金術の考え方は当たり前に存在していたようだ。(この辺りは調べ始めるとどハマりしそうなのでこのくらいにしておく)


なぜファンタジーもので4属性が広まったのか

日本のファンタジー系の創作で4元素説が広く支持されるのには何か理由があるのだろうか。
パッと思いつくのは、日本人の八百万の神の考え方と4元素説の世界観の相性が良かったから、という理由。
なんでもありがたがって、どんなものにも神様(もしくは精霊?)が宿るという古来からの日本人の考え方は、全てのものは4つの元素「地」「水」「火」「風」から構成されている、とする考えによく融和し、石には地のエネルギーや精霊、神様の力が宿っている、とか、湖には水の精霊が棲んでいるとか、そんな想像がし易かったのではないかな、と思った次第である。
神も仏もない現代科学を少し味気なく感じるのは分からないでもない。


対応する物理(を含む科学)の概念はどんなものがあるか

さて、ここでようやく本題である。
そもそも「地」「水」「火」「風」という4つの属性が、現代科学の概念と対応していて面白いという話がしたいのだった。
ファンタジーものによく登場する4属性は、それぞれ、
地:固体
水:液体
風:気体
火:プラズマ
という、物質の状態に対応しているように感じる。固体、液体、気体に関しては物質の3態というやつだが、火に対応するプラズマは狭い意味では電離気体とも呼ばれている少し特殊な状態のことだ。
どう特殊かというと、プラズマ状態にある物質はイオンと電子に分かれた粒子で構成されているという点で特殊である。これは他の3つの状態と比べて「電気」に非常によく反応することを意味している。(水に溶けたときに陽イオンと陰イオンに分かれる電解質なんかもこの性質を持つ)
他の3つの状態は、分子間力の強さによって区別される。物質の状態は、原子や分子がどれだけ暴れ回れるか、によって決まるというわけだ。
また、これらの状態は、「温度」や「圧力」によって変化する。
温度を上げれば暴れ回る元気が溢れるので気体になるし、温度を下げれば暴れ回る元気がなくなるので固体になる。
圧力を上げると物が密集するので、どんなに元気でも暴れ回れる範囲が狭くなり、固体になる。
反対に、圧力を下げると周りに誰もいなくなるので好き勝手暴れまわり始めて、気体になる。
といった感じである。
しかし、そこらに転がっている石ころなんかは、どんなに頑張って温めてもなかなか液体にはなってくれないし、空気を液体にしようと思ったら相当頑張って圧力をかけないといけない。そういう意味で、石は固体の属性が強いように感じるし、空気は気体の属性が強いように感じる。
言い換えると、石は地属性で、空気は風属性ということになる。
良い対応関係なのではないだろうか。


なぜ面白いと感じるか

ここまで書いてきたことの中だけでも、考えていて面白く感じたネタは多い。
これがなぜ面白いと感じるのか少し考えてみることにする。
大きいと感じるのは、「自分にも考える余地がありそう」と思えることである。想像するのは自由だし、過去の考え方を参考にしたり、現代科学を参考にしたりできるので、想像が膨らみやすい。その過程で、「こんなものがあったのか!」という存在や、「この考え方は面白いな」と感じる考え方に出会えるのも面白い。事実、調べていて様々な説が提唱されていて、そのどれも面白いと感じたし、それらの説がなぜ否定されたのかを知る事で得られる知見もあった。

例えば、それぞれの属性の「変換」は許されるか、を考えるのは面白い。
例を挙げると、現実なら水は熱すれば蒸発するし、冷やせば凍るが、創作の世界で氷や水蒸気はどの属性になるのだろうか。そして、このような状態の変化はどのように扱っているだろうか。実は地水風がものの状態に関わる属性で、火属性は地水風の属性を行き来させる熱の役割を果たしている、とかそんな発想もできる。火はちょっと変なやつになりがちである。

過去に多くの真剣な議論がされてきた概念から得られる、知識や考えの広さが面白いと感じる大きな要因かなとか考えた。